概要
近年様々な地方で、その特色を生かしたイベントやアートの展示などによって人を呼び込むなど地域の活性化の取組が進んでいる。この瀬戸内に浮かぶ小豆島もオリーブやみかんの栽培が盛んなところで、今も島の随所にかつて栽培されていた葉タバコの乾燥小屋が残っている。
2013年に始まった瀬戸内芸術祭では多くのアーティストの作品を全島に公開し、多くの観光客が訪れる注目の島である。
この計画は、オリーブやミカンを栽培する農家の主婦からの依頼で始まった。敷地は小豆島町池田地区にある山のふもとの斜面にあり、そこに代々建てられた建物が母屋を中心に建ち連なっている。一番上部の母屋から、蔵、撰果場、家畜小屋、ガレージ、と徐々に南へ下りながら建てられている。さらに一番下が、3mほど急に下がったお遍路道に面したオリーブ畑の傍らの古い葉タバコの乾燥小屋の2階に繋がっている。この登り窯のような建物群をパン工房と、カフェ、撰果場と、ギャラリーなどに改修することで、施主は、子育てが終った第二の人生ともいえる今後の生活を、島の人々だけでなく、様々な場所からここを訪れる人々との交流を通じて生きがいをあるものにしたいと願っておられた。その為には、地域と調和しつつも、この新しい施設は道からは少し印象的な建物が求められると考えた。
この改修計画の構造的特徴は元の畜小屋だった部分とガレージを9mを超える長弦梁でつなぎ一枚の屋根とし大空間を確保したことである。このことで、撰果作業にゆとりを持って行えることが出来、出荷もスムーズとなった。また全く撰果場を利用しない農閑期には、ギャラリーとして大型の作品も展示することが可能で、様々なアートの催しに対応出来るよう計画している。お遍路道を上がってくると、パンの店がオリーブ畑越しに見え、そこから見上げると登り窯のように斜面を這い上がっていく建物群が見える。
オリーブの木の下で旅人達が休息を取り、ギャラリーには大勢の若者が集まり、地域の人々と交流しているそんな「撰果場ギャラリー」の姿を期待している。