概要
進化する古都
創業以来寺町六角通南西角に店をかまえる「安田念珠店」は、三百三十余年の歴史を誇っているが、先代の時、現在のビルの店舗に建替え40年を経て今日に至っている。10代目の現社長が、世界的な京都ブームによる急激な外国人観光客の増加やインターネット販売を開始したことによる、若い顧客層への認知度の向上などの現状をふまえ新しい京都伝統工芸の情報発信の核として次世代にアピールできるデザインの「安田念珠店」としてさらなる発展を目指し生まれ変わるように全面改装に踏み切った。
それまでの店は売場が狭く数人の客で身動きは取れなくなっていたが、入口のスペースに余裕を設けまた店の奥まで店場を広げた。展示ショーケースもそれにともなって延ばし、その面積は以前の約三倍の広さとなった。これにより抜群の品揃えを誇る「安田念珠店」の商品をあますところなく展示し、顧客の要望に十分応えられるものとなっていると同時に大勢で一度に訪れる外国人客にも対応出来るようになった。
また展示ケースの向かい側に対面型のショーケースを配置し、顧客の相談に店員が気軽に対応し、顧客がじっくりと商品を選ぶことが出来るようになり、店内で職人が実際に念珠を作るところを客が見るという代々の店場の特徴もそのまま生かして伝統工芸に対する理解をより深めてもらうよう考えている。そして従来からの「京都」=「和」の固定したイメージだけではなく若い次の世代や海外から訪れる人に感動を与えることが「進化する古都」を創出するデザインが1つの建物から取り込む必要があると考えた。
店内のインテリアは、サビ鉄板をイメージした素材のショーケースや水をテーマにしたビジュアルを使い、従来からの「京都」=「和」の空間というものと異なり「自然」や「祈り」「心」と言った抽象的イメージを喚起することで、念珠本来の価値が伝わるようデザインした。
またその外観は、斜めにランダムに上方へ延びるジョイントラインが特徴のチタン亜鉛合金板で包み、シャープだが時間の経過によって風合いを帯びていき、侘び・寂びの京都の心を具現化したデザインとした。イメージを一新した「安田念珠店」が、寺町六角で京都の新しいランドマークとして人々に親しまれることを期待している。