概要
この住宅は、琵琶湖と田園を見下ろす素晴らしい眺望の土地に建っていた二つの古民家の改修工事である。
大学で神学を教える妻と出版社に勤める夫が、終の住まいとして手に入れた古い母屋と納屋で構成される古民家を住まいの部分と、学生を集めてキリスト教の話をしたり祈ったりするためのプライベートチャペルに改修することだった。
母屋の方は、ほぼ廃墟といえるくらい古く傷んでおり、傾きを直す必要があったが、1Fにリビング、ダイニング、それに続く大型のキッチン(これは学生と一緒に料理を作ることが出来る)、和室、2Fを書斎と寝室にした。
美しい竹で組まれた屋根裏の形を残すため、瓦を葺き替える時に外断熱とし、遮熱シートと高性能断熱材を瓦の下に入れている。全体の梁や柱をなるべくビジブルにして、古民家の雰囲気を生かしたが、外に向かって木製のデッキを配し、低く垂れた下屋の屋根との間が、かがむほど低く、それが外の景色を絵のように際立たせている。
また、井戸のある半戸外スペースをはさんで、納屋を改装したプライベートチャペルがあるが、コストを抑える為これは全ての内装が針葉樹合板となっている。元々の計画は、漠然と学生との交流スペースとしてゲストハウス的に使いたいとはっきりしなかったが、母屋との違いをはっきりさせることが、この建物の性格をはっきりさせることと考え、元々のフラットな天井を取り去り、杉板と杉皮の天井をそのままあらわしとし、断熱材もいれず、まるで家畜小屋のようなチャペルとなったが、これはキリストが馬屋で生まれたことにちなんでいる。
チャペルでは夏休みに自宅の施設に学生を招いて合宿のように研修や親睦を深め、教える側、学ぶ側それぞれが、大学のキャンバスとはまた違う環境で、交流することで、若い人と老齢を迎えるそれぞれの人生を豊かにするのではないか、また教区の人達との集会にと、リタイヤ後も社会に役立つ事でつながってゆきたいという施主の希望が強くあった。プライベートチャペルは竣工後、施主によって「マグダラハウス」と名づけられた。