概要
奈良県北部の田園地帯の一角にある、60代の夫婦と将来息子家族との同居を見込んだ2世帯住宅である。大きな敷地に庭と家を対比的な図式で計画すると、建築内部の動線が外部と繋がらないまま完結してしまい、敷地の広さをないう空間に生かせないと考えた。そこで建物の各空間を「間」、つまり庭を挟んで配置することで、外部空間との関係を密にし、外部空間を取り込んだ広がりのある建築空間を目指した。南門を抜けると左側に細長い庭が、敷地のほぼ中央を北に向かって伸びている。この庭に沿うように東側に2間続きの和室を配し、それらと向かい合って西側に夫婦の寝室と母親の寝室が配置される。それらはわずか一間半の距離しか離れていないが、庭があることで距離が保たれると同時に和室の3間分のガラス戸と向かい合う各寝室のガラス戸を前開することで庭を介してひとつながりの場として感じることも出来る。
建物の構造は、集成材と金物で構成されているが、できるだけ大きなスパンの空間とするために梁間に軒の出を足した9mを超える長さの、梁せい270mmの登り梁を470mmピッチで現しとして南から北への片流れで架けた。西側の道からは、屋根が塀越しに連続して見えて美しい。