概要
海と山をつなぐ敷地の潜在力を最大限に生かした、淡路島の別荘計画である。近年、淡路島はゴルフやリゾートを楽しむ人々から注目を集めており、施主は仲間とのゴルフ拠点として、令和3年に北部西側の海沿いにある宅地5区画のうち4区画と、市に譲与予定だった道路スペースをまとめて取得した。敷地は扇状に連なる地形で、漁村の先に瀬戸内海や小豆島、本州の海岸線が見え、振り返ると山の稜線が連なるという恵まれたロケーションである。
複数の区画はそれぞれ地盤の高さが異なり、最も高いエリアから海側の低いエリアまでおよそ1.4mの段差が生じる。そこでゲストユニットとオーナーの部屋をBM+900に設定し、ガラス張りのギャラリーを介してLDKへとつなげた。またLDKの一部をBM+500に跨らせることで下部を空洞とし、門から正面を見通した際に建物越しに漁村と海を望めるよう工夫している。さらにLDKから1600ミリ下がった位置に浴室と洗面を配置し、全開放できる開口を設けることで瀬戸内海を一望できる構成とした。
中央の道路スペースは通路として活用し、最も低い区画(D)には駐車場を設けている。宅地造成時点で排水などのインフラが整えられていたため、工事においても大きな支障はなかった。しかし設計開始時から建築コストが急上昇し、プランや構造計画を再度見直す必要があった。最終的には実績のある工務店と連携し、試行錯誤を重ねることで完成にこぎつけた。
東側の開発が一段落した淡路島では、西側の海岸エリアが今も活気を帯びている。京阪神や四国のどちらにも近く、交通アクセスに恵まれたこの別荘が、施主に多彩なリゾート体験をもたらす拠点となることを願ってやまない。