概要
京都市の南、京都から奈良を抜け伊勢参りに向う人々で賑わった奈良街道と醍醐方向へ抜ける街道とが交差する北東の角地に建つ「旧旅籠」を残し、それに調和し連結させる形で、外資系企業に勤める夫と大学で教鞭をとる妻とその娘、そして妻の両親、5人の為の住宅として設計した。
「旧宇治屋」のオーナー夫妻(妻の両親)は街道沿いの古い建物が次々と取り壊され、無秩序に建てられ、メーカーハウスによって街道の風景が変貌していく様に危惧し、地域のシンボルとも言えるこの建物を何らかの形で再生存続させたいと考えていた。その為、新しい住宅は敷地東側の老朽化が激しく再生が不可能と思われる納屋や使用人住居などを取り壊し計画することになり、「旧宇治屋」は残されることとなった。
「旧旅籠・宇治屋」には母屋と倉、渡り廊下、離れによって囲まれた江戸時代からの中庭があるが、その庭と新しい建物の庭とを一体感のあるものにしたかったため、新しい建物の中央に大きな中庭をとり、エントランスから建物内部に至る渡り廊下を新旧2つの庭の間に取り、両サイドをガラス張りとし、訪れる人が2つの庭を楽しめると共に東側のダイニングからは渡り廊下を通して全ての庭が見渡せるようにした。また屋根の形もシンプルな切妻屋根とし、「旧旅籠・宇治屋」の屋根とリズムを合わせたデザインとした。
構造は当初より在来木造で計画していたが、正面道路が近年の交通量の増加によりあまりに騒音や振動が激しいため、ガレージとアプローチをRC打放しとした。その結果、騒音や振動の減少に大きな効果をもたらした。
また切り取られた道路沿いの塀を兼ねた納屋の壁はそのシルエットに沿ってRCで再生され、新旧の建物が連続性を持つようにし、家族が生まれ育った時間を思いながら暮らせるように願いを込めている。