概要
この住宅は、奈良県北部の大和郡山市にある生駒山系を望む高台の敷地に計画された。
宅地造成された土地であったが、山が望める西側は道路を挟んで数m下がっているので将来にわたり遮られる心配はなく、この景色にどう向き合うかは、重要なポイントとなった。しかし南北は隣地に挟まれ、南側にはすでに境界一杯に隣家が建ち、景色や採光は期待できない状況であった。そのため、西側の眺望を確保し周囲との関係を考える必要があった。
そこで1Fを子供室と寝室とし、2Fの眺望を考え西側をリビング、東側の奥をダイニングキッチン、水回りとし、キッチンからは中央のガラス屋根の下にあるアトリウム空間越しに遠くの山々が見渡せるようになっている。床を土間としたアトリウムにはシマトネリコの木を植え、上下の空間をつなぎ各ゾーンをやわらかく分接している。
構造的における特徴は、居住部と土間空間を包み込む屋根一体の外郭での構成の中で、柱とノボリ梁の接合部を三角形のOSB板で挟んで固定された半鋼接のフレームが1820mmピッチで連続している。このフレームの形式は、コストを出来る限り押さえるため、高価な金物の変わりに考えだしたもので、それがこの住宅のインテリアの要素のひとつになっている。
建築素材において、外壁一枚で高性能で断熱や採光、防音、耐震、防水、デザイン全てをまかなおうとするものがあるが、それには無理があると考えている。
この建物では内と外を1枚の壁で隔てるのではなく、土間を内部に取り込む二重構成とした。外壁は断熱や防水の機能をもたせ、内部土間をつくる。内部土間と居室空間の境界となる内壁は、少し隙間を開けたバラ板仕上げとすることで、季節や時間による微妙な光の変化や空気のゆっくりとした流れをつくり出す。居住部分を包む外郭(内壁、内土間、外壁の重構成)が生み出す空間のあり方に可能性を感じている。