概要
計画地は大阪府八尾市の信貴山の裾野に連なる丘陵にあり、夫婦と息子と夫の母親の為の古い伝統様式の旧家の改修とその離れの建替計画である。
敷地は南北に長く、南北それぞれが狭い道路に接している。北側は道路から庭に続き築60年ほどの母屋が建ち、草木で一杯の中庭を隔てて南に「離れ」が建っていた。さらにその南は再び庭となり、道路まで続いている。つまり北側の道路から「北の庭」母屋「中庭」離れ「南の庭」南の道路の順にこの敷地は構成されているが、それぞれのレイヤーは、分断され全体としてこの敷地と住宅が全く機能していないことに気がついた。
そこでこの計画の基本的な部分で、まずこの分断された敷地をいかに連続させるかということが、最も重要なポイントであると考えた。それは3つの庭をいかに繋ぐかを意味していた。そこで母屋を中庭に大きく開くよう改修し、そこから新築の離れに中庭を渡る幅3mのデッキをのばし、そのままデッキは離れを東西に分断して貫通し、南へ抜けるように計画した。
この結果、北側の母屋の玄関から南の庭まで一気に見渡せるようになり、南北の空間がダイナミックに連続した。デッキによって分断された新築部のLDKと夫婦の寝室は解放できるガラスの折戸でつながっており、外部と居住部それぞれの関係を選択的に変えることが出来る。
庭は出来るだけ元の木や石を生かし利用することを前提にしているが、北の庭は伝統的な様式の母屋に合わせ、槙や松を中心に日本庭園の形をなるべく残した。また中庭はデッキの東側に新たに作り、島のように植えたヤマボウシの間から母屋の応接室と離れが互いに見渡せ、広々感じるようにし、西側は元々あった木を大きいものは整理して、老梅を中心とした広葉の高めの木と灯篭や手水を配し、寝室への視界を制限するように作った。南の庭は、玄関からデッキを抜けてみた時、ちらっとのぞくハナミズキが、視線を引き付けてダイナミックな空間を演出している。